論文の書き方 (参考文献[1]も読むこと)

執筆の心構え([1]より抜粋)

論文とは、単なる結果の報告書とは明確に異なり、「論じること」が必要となる。そのため、出てきた結果と自分の考察を明確に区別し、客観的に自分の考察・理論の妥当性の証明を行うことが必要である(有意な結果を並べておけば、読者が勝手に解釈してくれるという姿勢を捨てること!)。また、他人の考えたことと、自分の考えたことを明確に区別することが重要である。特に、理工系では他人のアイディアを盗むことはタブーとされている。言い変えれば、日頃より、他人の成果を評価する姿勢が大切である。他人の論文に対しての安易な批判はすべきではない。

 

文章表現について

論文執筆の基本は読者の立場に立って書くことである.そのためには,平素から他者の論文を読む際に,読み易さという観点からも注意して読んでおくことが参考となろう.

明瞭に
言いたいことが直截に誤解なく,しかも能率的に伝わる文章を書く.そのためには,伝えたい情報の一つ一つを明確な短い文章にするのがよい.そして一つ一つの文章が二通りの意味にとられる恐れはないか,代名詞や関係代名詞が何を指しているかが明確かを考える.「その」「このような」などのあいまいな表現は出来るだけ避けること!さらに一つ一つの文章の配列の仕方が,論文のわかり易さ,読み易さに決定的な役割を果すことも忘れてはならない.また、読みやすく、一つの文章には一つの主張、一つのパラグラフには一つの主題を心がけよう。

簡潔に
冗長な表現,あいまいな表現,不正確な言い方を避け,なるべく定量的な表現を行うようにする.どの語も独自の情報を担っているようにし,不要な語は理解が困難にならない範囲で削ってしまう.著者の意図を伝えるのに直接必要でない事項は思い切り良く省略してしまう.本質的でない情報はかえって読者に混乱を招き,論文を読み続ける気を失わせる原因となる.

筋道立った表現
読者は論文の主題やそれに関連する事柄を著者のようにはよく知っていない.論理の鎖の環の一つを著者が無意識のうちに省略したため,読者がそれをたどれなくなることが多い.条件の記述に落ちはないか,論理の飛躍はないか,読者の立場から記述を綿密に吟味すべきである.

それだけでわかる表現
論文は自己完結していなくてはならない.論文の中に与えてある情報だけで,読者が著者の記述をすべて理解できるように書くことが必要である. 論文を書くときには書く側の立場から書いてしまう。しかし、読む側の立場から見ると全く別の解釈をされてしまうことがある。従って書きっぱなしというのは良くなく、自分を純粋に読む側のサイトに置いた上で読み直してみることが必要。

明記すべきこと

自分のした仕事と他人の仕事の引用とがはっきり区別できるように書き,図や式などで他人の成果を利用するとこは出典を明らかにしなければならない.また,データを示す場合には,どういう誤差があり得るか,データの精度はどれだけかを明記しなければならない.同様に,結論はどういう条件のもとで成り立つものかを明記しなければならない.

 

書いてはいけないこと

法律的または道義的に秘密とされていることを書いてはいけない.この制限のために論文が原著論文の定義を満足できなくなる場合には,本論文として投稿することはあきらめるほかない.やむを得ず私信(会話を含む)の内容を利用する時は,発信者の了解を得なければならない.
 他の研究者の仕事を批評する時,たとえば「・・・・・の結果だから信用度が低い」というように,個人攻撃に類する書き方をしてはいけない.批評は実験の方法,混入したと思われる誤差のように,客観的な面だけに向けるべきである.
 自分の発見,実験結果に対して〈important〉,〈very interesting〉などの形容をすることは差し控えるべきである.

 

論文の区切り  

一つの仕事に対して、複数の論文を書くとき、どの範囲で区切りにするかは慎重に判断しなければならない。一論文の中で一つの明確な主張が原則。水増しして、二つの論文にわけるようなことをしてはいけない。

 

論文の体裁

 

序章

○研究の背景

研究をとりまく社会環境、今まで行われてきた研究

○研究の目的

背景をもとに自身の研究の必要性・意義・従来の研究との差(独創性)を明確にする。

○論文の構成

構成と各章の位置付けを書く(フローチャートなどを使う)。また、各章ごとにも、その章の位置付けが明確になるよう序と結論を書くことが望ましい。

○(当該分野における他の研究)

研究の手法

○理論、実験/計算手法(複雑な式はAppendixにまわす)

他人が提案したものと、自分が提案するものを明確にわける(通常の論文の場合は自身が提案するものを重視し、それ以外はなるべく簡略に書く)

結果

行った実験・計算の結果のみを正直に示す。なるべく主観を入れず、客観的に書く。

考察

出てきた結果に対する自分なりの解釈を述べ、意義をもたせる。自分以外の実験データとも比較検討することが望ましい。ここでも他人の意見と自分の意見とを明確に分ける。また、単なる結果の説明や感想で終わってはいけない。解釈が正しいことを証明するために行った実験・検討などもここで述べる。

結論/課題

○結論

論文の要約を記し、特に強調したい点を「〜という検討を行って、〜が明らかになった」などと記す。序章で述べたことと矛盾しないように気をつける。また、序章と同一の内容にならないようにする。

○課題/展望

不明な点。これから必要とされる検討課題。特に翌年に継続する人に情報が伝わるよう、必要事項の詳細を付録に記載しておいてほしい。

参考文献/謝辞

○雑誌からの引用:著者名・題名・文献名・巻・ページ(年号)

○本からの引用 :著者名・本の題名版、ページ(年号)・出版社・その所在地

○参考文献は必ず読んだもののみ挙げる

○謝辞は研究を行うにあたって支援を受けた団体、個人的に議論した人を挙げる。(卒/修論文は遊びのページとなるのが通例)

付録(Appendix)

○本文と付録を分けて作る。本文には、論旨の記載に必要な範囲でデータ、プログラムを掲載する。単純なデータ群、プログラム群は本文に記載してはならず、付録にまわす。

 

チェックポイント([1]より抜粋/修正)

1 意図を伝えるのに必要な情報をすべて盛り込んであるか.

2 余分なことを書いてないか.削れる箇所はないか.

3 それぞれの項目に適切な重みをつけて記述してあるか.

4 記述の進め方は筋道立って,十分な根拠を備えているか.論理の飛躍や不連続がないか.

5 十分に定量的な説明をしているか.

6 最終的に引出そうとしている結論に対して十分な裏付が示されているか.

7 表題,節の分け方,見出し名は適当か.ページ番号は振ってあるか.

8 図表は有効に使ってあるか.見易さは十分か.縦軸、横軸の記載、記号の記載など図の中だけで意味が理解できるようになっているか.図表の見出し(図は下、表は上)、スケール、単位の落ちや誤りはないか.

9 文字,記号の説明,数値の単位に落ちはないか.

10 一般に慣用されていない省略名を用いていないか.もし用いているなら初出の際に full spelling を与えてあるか.

11 原稿枚数の水増しはしていないか.(資源の無駄!)

12 各章ごとに、その章の位置付けが明確になるよう序と結論があるか.

以上の各項に照らして不十分な箇所が見つかったなら,その書き直しとそれに伴う他の箇所の修正を行う.

 

参考文献

[1]科学論文を書くにあたって(特許関連の内容を含む)☆☆☆

http://www.jssst.or.jp/jps/jpsj/jshiori/etc/writing.html

[2]参考書リスト http://www.nets.ne.jp/~keio/reportliste.htm

[3]HPの作り方 http://www.senshu-u.ac.jp/~thm0510/doc/homepage/index.ja.html

[4]レポートの書き方 http://www.ed.kuki.sut.ac.jp/~jms103/ipe/report.htm

[5]論文の書き方  http://www.interq.or.jp/world/samonn/ronbun.html